第43回
~醍醐寺~
密教と文化-自然と文化の協奏

2022年12月17日(土)開場15:30 開演16:30
2022年12月18日(日)開場15:00 開演16:00

総本山醍醐寺・霊宝館


12月17日(土)
◉ 記念講演「樹影の仏陀」 中西進(国文学者)

◉ 目で耳で心で– 京都醍醐寺で幻想のひととき
声優朗読劇「高野聖/泉鏡花」「土神と狐/宮沢賢治」
浪川大輔、増田俊樹、上田瞳

12月18日(日)
◉ 聲 明 総本山 醍醐寺

◉ 能『自然居士』
大槻文蔵(シテ 自然居士) 井上華菜(子方 少女)
宝生欣也(ワキ 人商人) 茂山逸平(アイ 雲居寺門前のもの)

◉ トークフォーラム「空海、かく語りき」
福岡伸一(生物学者)、古市憲寿(社会学者)、仲田順英(総本山醍醐寺執行・統括本部長)


記録映像/YouTube

2022年12月に京都醍醐寺で開催された第43回世界遺産劇場ー醍醐寺ー「密教と文化-自然と文化の協奏」の記録映像。2日間に亘り行われた公演の模様をダイジェストでご覧いただけます。



ギャラリー

12月17日 会場の霊宝館は醍醐寺の三宝院(国宝)の向かい側に建つ仏像や絵画、資料などの文化財を展示・収納した伽藍です。

会場のステージは、霊宝館中央に安置されている、薬師如来像(中央 =国宝)、日光菩薩像・月光菩薩像( 左右=国宝)、帝釈天・閻魔天(両 端=重文)の直前に設営されました。 出演者はこれらの仏の像を背にして、 演じます。照明の変化により、空間の雰囲気を演出する事ができます。

客席は約900席を設置できます。

中西氏の講演「樹影の仏陀」は、仏像の背後にある後光や天蓋の由来につい てでした。実際の仏像が背後や、周囲に安置されてますが、この後光や天蓋は 「仏性」を表すものであるが、由来は釈迦が瞑想しているとき、樹木を通して太陽の光が作る、丸い木漏れ陽の形にあるという、 興味深い解説でした。

会場の通路から、醍醐寺の僧が声明を朗詠しながら舞台に。

密教が連綿と千年以上伝えてきた宗教音楽が流れました。

朗読劇「高野聖」は奥飛騨の深い山中を修行の旅をしている若い密教僧が、森の一軒家に住む魔性の女の誘惑に合う話だ。

辛くも誘惑を振切って逃れた密教僧だが、負けてしまうと猿やカエルなどの動物に変えられてしまうという、密教の回峰行の中の幻想的な泉鏡花の名作です。

第2話は宮沢賢治の「土神と狐」。 賢治の作品の中では心の内面と生のむなしさを描く、諸行無常」の響きのあるもの)のでした。 日本の近代文芸2作品を演じました。

朗読劇の後、出演した上田瞳(京都市 出身)、増田俊樹、浪川大輔(左から )と醍醐寺執行・統括本部長の仲田 順英氏と仏教、密教、仏像、醍醐寺に かかわる質疑応答。

舞台は昨日と一新し、能舞台に模様 替えした。この舞台で、声明、能、 フォーラムを演ずるので、橋掛かりを折り曲げて舞台センターを少しで も客席センターに合わせるようにした。また、昨日に引き続き、客席後 方に20㎝高の平台を敷き、後方席の見にくさを解消した。

醍醐寺は、観阿弥・世阿弥父子が足利義満 に見出される以前、奈良の春日大社の参道で演じていたころから、彼らのパトロンとして醍醐寺境内を上演の場として提供した り、経済的な援助もしていた。この醍醐寺と成立期の能との故実から、今回は観阿弥作の「自然居士」(じねんこじ)を上演した。これは世阿弥の完成させた「幽玄能」 以前の、大衆に向けた活劇的な内容である。 能の廃曲を復元している大槻文蔵氏の、古演出による上演であった。

醍醐寺を思わせる、京の雲居寺の僧・自然居士が法要をしていると、少女が小袖を捧げ、両親の冥福を祈ってくれと、と頼む。しかし少女は寺から人商人に連れ去られてしまう。聞けば、少女は我が身を人買いに売って小袖を買い、自然居士に奉納したという。自然居士は、少女を救うために、寺を捨て、人商人を追う。琵琶湖畔で、少女を連れた人買い一 行が舟に乗る所で追いついた自然居士は、小袖は返すから少女を解放せよと迫る。人商人は逆に、命を取るぞ、と自然居士を脅すが、返さねば、どこまでもついていくという自然居士のしつこさに負けて、少女を返す。

しかし人商人らは、返してやる代わりに、自然居士 を散々に嬲ってやろうと、当時流行の舞を舞えと、 自然居士に迫る。自然居士は、言われるがままに僧のくせに遊女の舞まで舞って、人商人をなだめ、つ いには少女を連れ戻し、京に帰っていく。 義満に抱えられて、武家や公家を対象にした幽玄能以前の、活劇的な能の姿を再現しました。

トークフォーラムは、生物学者の福岡伸一 氏、社会学者の古市憲寿氏、醍醐寺の仲田 順英氏の出演でした。 冒頭の仲田氏は、「密教は秘密の教えではなく、緻密な教えという意味」と、語感からくる誤解を解き、空海の「山川草木悉皆成仏」という言葉から、この世界は 仏の法の世界に覆われているという、密教の原理を解説してくれました。

続いて古市氏は、かつて高野山で長期間、歴史探索をした経験を基に密教が如何に日本の自然を背景 に生まれてきた思想であるか、を強調しました。

また、福岡氏は、 氏の所論「動的平衡」論に従って、 生命は絶えず自分を構成する要素 を周りの環境と交換しながら生きて 聞くことから、「生命の相互性は密教の仏性が覆う世界に通ずると論じました。

撮影・竹下光士


チケット


名義

主催:京都「歴史と文化」発信事業推進実行委員会
特別協力:総本山醍醐寺
協力:Animax Broadcast Japan Inc.
企画制作:世界遺産劇場実行委員会
令和4年度日本博イノベーション型プロジェクト 補助対象事業
(独立行政法人日本芸術文化振興会/文化庁)
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